基本の種まき
ヤシの発芽に最適な温度は25〜32℃。1に温度、2に温度、温度が低かったり高かったりすると発根しません。
新鮮な種子なら水に漬けなくても発根することがあります。
40℃を超えると発芽能力を失う場合があるので真夏は直射日光を避ける、熱くなった水をかけない。
屋外蒔きで発芽しやすい季節:5月〜7月 9月〜11月
寒すぎる12月〜3月、暑すぎる8月をどう対策するか。
他に、陽が当たりすぎないこと 日陰すぎないこと 乾かないこと 水没状態が長く続かないこと 通気性が良いことなど
発芽の早いヤシ(※1)もありますがほとんどは2ヵ月〜1年以上かかりますから維持するのは中々大変です。
室内での袋まき、タッパーまきは温度が維持できれば1年中できます。
密閉されると多湿ぎみになり、空気の循環、殺菌要素もないためリスクが上がります。
とくに乾燥した環境に自生するヤシ(※2)は発根後すみやかに植え替えることが肝心です。
土:無肥料 排水性 保水性
肥料が入っていないこと。発根しやすい温度はカビにとっても快適であるため、種まきは菌との戦いです。
清潔な環境で、使い捨てのビニール手袋をつけて作業すること。
(※1) ユスラヤシ属、フェニックス属は1〜2週間程度で発芽するのでおすすめです。
(※2) ブラヘア アルマータ、ナツメヤシは袋に放置すると傷みやすい。ビスマルキアは根がビニールを貫通することがある。
蒔く前に
果肉が残っていればこそぎ落とし、種子を軽く洗い、1〜2日水に浸します。水は半日に1回程度取り替えます。
全て沈みました。これは良い種子です。(Brahea armata)
一方こちらは…
全て浮きました。これは悪い種子です。(Butia matogrossensis)
例外としてチリサケヤシは浮いたものも数日浸して沈んだのちに発芽するものもあります。
外見は綺麗ですが殻を割ってみましょう。
ほぼ発芽能力が失われているような感じです。
形を保っている胚も中身が茶色くなっていました。おそらく、どれだけ待っても発芽することはありません。
【ロングポットに蒔く場合】
根が長く伸びるタイプ、ブラヘア、ビスマルキアなどは必須。根が短いタイプでも
高さ20センチ、口径9センチのロングポリポットはやや大きいですが、深さはこれでも足りないくらいです。
メリット:根が巻かない 土が乾燥しにくい 発芽後植え替えの必要がない(種1粒で蒔いた場合)
デメリット:土の使用量が多い 倒れやすい
土は無肥料で通気性の良いもの
赤玉土、日向土(ボラ土)、パーライトを使っています。また、赤玉土が固まらないようにハスクチップともみ殻も混ぜてみました。
ブラヘア アルマータの種
発芽までの期間が2か月〜3年以上とばらつきがあるのであえて複数蒔きにしています。
種がぎりぎり隠れる程度に土をかぶせます
半日陰に置いて待ちます。完全な日陰だとカビ、コケが生えやすい気がします。おそらく少ない紫外線でも菌の脅威は抑えられるのではないかと思います。
完全な日向は発根開始時に乾燥してしまい発芽能力が失われてしまう恐れがあります。
周りは前年同じ方法で発芽したブラヘア アルマータ
【中型のプラ鉢に蒔く場合】
ロングポットと同じくらいの深さがあるので上位互換になります。
メリット:安定している 複数蒔きができる
デメリット:ロングポットより乾燥しやすい 放置すると発根したもの同士で合体してしまい株分けが困難になる
複数蒔く場合は種同士の距離を開ける。死んだ種から菌の感染を和らげるためです。
種が軽く隠れる程度に土を被せて…
乾燥対策にミズゴケを被せました。ロングポットより乾燥しやすいからです。
Chamaerops humilis var. cerifera (チャメロプス セリフェラ)前年11月に発芽したもの
屋外まきは初夏〜秋限定です。
【大型の果樹・植木用ポットに蒔く場合】
30個以上の種を同時まきできます。
メリット:中型のプラ鉢よりスペースが広いので発芽後放置されていても株分けしやすい
デメリット:鉢から出すときに土の重量で根が切れやすい 室内に取り込みできない
土の重量問題を軽減するためにハスクチップを使いました。通気性の良い優れた資材ですが、水分の管理、虫、カビの栄養になるなどの問題点もあります。
ハスクチップと土、交互に入れてけ通気性、軽量化、排水性を高めます。資材が大量に必要ですが、その分種を沢山まけます。
このあとハスクチップを上から被せています。
前年11月 発芽確認 スペースに余裕があるのでもっと待ってからでも株分けできます。
長期の発芽待ちになるとハスクチップが腐ってくるので発芽率が低下するかもしれないです。自然界の環境でもそうだと思いますが。
Chamaerops humilis 'Vulcano'(ヴルカノファンパーム)
室内に取り込めないので耐寒性のあるヤシ限定ということになります
【小型ポットにまく場合】
小さい種をのぞいて水管理が難しいのであまりおすすめしません。
しかし、冬の種まきでは省スペース性が活用できます。
メリット:省スペース 土の量が少ない 室内に取り込める 冬まき向け
デメリット:真夏はすぐに乾燥したり、逆にやりすぎて濡れっぱなしだったりで難しい 根が長く伸びるタイプは底でぐるぐる巻きになり根腐れしやすくなる
冬の種まき
ジップ袋に入れて電気カーペットの上に並べています。並べた中心部は35℃まで上がり、外側は15℃程度とムラがあります。
袋内では温度の高い位置が乾燥して、低い位置が濡れっぱなしになる問題もあります。乾燥しっぱなし、濡れっぱなしの種は死にます。
発芽後であってもリスクが続きますので本当に大事な種なら冬まきしないで初夏からにかぎるでしょう。
最初葉が1〜2枚は胚乳の栄養で育ちますがそれ以降は照明が必要になります。植物育成ライトが適しています。
暖かい季節になったら袋から出します。いきなり出すと植物は湿度の急変でドライ化してしまうので袋の口を開けた状態で3日ほど置いて慣らします。
夏になるまで袋に入れっぱなしだと蒸れと高温で枯れてしまいます。
【発芽育苗器を使う場合】
上のジップ袋と電気カーペットでのまき方と理屈は同じです。
やはり中央の温度が高く、外側の温度が低くなる傾向があります。
本来トレーに用土を入れますが、トレーの上に用土を入れたポットを置きました。
メリット:管理しやすい 状況を見やすい
デメリット:フタが低く芽がすぐ天井に達する
発芽育苗器「愛菜花」
前回の続きです。ヒーターの熱を伝えるための砂を敷きました。ゼオライトで清潔なデグーサンドは比較的粒が大きい。
砂の上にトレーを置きました。本来はトレーの中に用土を入れるのですが薄く砂を敷いてその上にポットを置くことにしました。
ポットを置いた状態。端はフタが干渉して一杯には詰められませんでした。
Clinostigma savoryanum(セボレーヤシ)
この育苗器はフタが高い方ですがヤシの芽はすぐ天井に達してしまいます。
真冬は全開にしない方が良いですね。
前年12月ごろに発芽確認。
真冬は「愛菜花」のフタの高さが影響してヤシの発芽適温まで達しません。
発芽育苗器 「菜友器」
。
フタは低い方が温度が稼げるのでヤシの種まきには「愛菜花」 よりこちらの「菜友器」が向いているといえそうです。緑の機器はサーモスタット
発芽後は展開前にフタに当たってしまうので一長一短ですが…
【袋をつかった種まき】
用土と一緒に袋に密封して発芽を待つ方法です。
ヤシではよく行われる方法ですが、カビのリスクが高くあまりお勧めはしません。
しかし、袋内で発根を見つけた時の喜び、成長する様子を観察できるのが大きいです。
発芽に時間がかかる種の場合、冬の間早めに室内で蒔いて、春に屋外の鉢に移すと発芽までの時間を稼げますし
いくつかの方法は試す価値があると思います。
メリット:場所をとらない 冬に蒔ける 発芽の様子が観察できる
デメリット:腐りやすい 放置できない
用意するもの:チャックのついた袋、使い捨て手袋、用土(ハスクチップなど)、殺菌剤(ベンレート、ダコニールなど)
100均にある食品保存用のストックバックを使います。日用品雑貨のジップ袋は水漏れするかも。
私はアルコール除菌スプレーを使います。使用は自己責任で!塩素系を使う人もいるようです。
ハスクチップを入れてよく洗います
電子レンジで蒸します。ハスクチップに潜む虫と菌を殺すのが目的です。
袋を閉じると爆発するので解放状態で、やりすぎるとチャックが変形したり穴が空くので注意。
虫は殺せても菌は完全に滅せません。殺菌剤も気休めです。おまじないのアルコールひと吹き。
熱がさめた状態
濡れてないけど湿ってる の状態が好ましい。種が呼吸出来て、乾燥しない程度の湿度。。
冬は加温が必要です。発芽マットの上に置く、暖房の効いた部屋の高い位置に吊るす、などで発芽適温を維持します。
発芽マット袋内の湿度にムラが出ます。完全に乾く部分がないように水分を多めにせざるをえないため、難しい加減になります。
あらかじめ水に漬けていた種を入れます。
この段階で殺菌剤を使ったりもします。
種を入れたら毎日チェック、カビがついた種はすぐに取り除き隔離するか処分します。判断の早さで残りの発芽率が断然変わってきます。
種から出る白い根を見つけた時の喜びはなんともいえないです(Juania australis)
用土は無肥料で崩れにくいものならなんでも。
観賞魚のフィルター用に使う活性炭を使ってみたり (Guihaia argyrata)
ミズゴケで包んでみたり (Ravenea glauca andringitra)
鹿沼土を使ってみたり (Parajubaea torallyivar microcarpa)
発根後放置しすぎると根が合体して株分けが困難になってしまいます(Brahea
sp. supersilver)
袋内で伸びて変形した根を鉢におさめることは困難で、初期に折れてしまった根が原因で枯れたりします。
袋内の多湿環境で徒長した葉は袋から出したときに折れたりドライ化することも。
植え替える鉢の深さよりも根が長くならないように、早めに植え替えるのがポイントです。
時間がかかるタイプはたまに袋を開けて空気を入れてあげるようにします。
夏の間は袋内が放熱できず発芽しにくい印象です。
春に袋から出して屋外まき、秋からまた袋に戻すようにしています。
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